おやすみの前に、
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夜も更け、ふくろうが子守唄を歌いだす頃。




「おかあさん、はやくはやく! 今夜はどんなはなし?」



「そうね、今夜のおはなしは……」












「ポケモントレーナーは嫌いだって言ったでしょ!?ついてこないでよ!」




「今の、おれを温めてくれてたんだろー?」




「……綺麗だね」

「うん、すっごく綺麗だ」












「めずらしいな、お前がこの時間にこの場所にいるなんて。おやつの時間にはまだ早いだろう?」




「……そんなに意外か? 私がこんな事を言うのは」




「え、メタナイトも居たんだ」

「さっきまではそこに座っていたんですけど……」












「この絵本。よくある冒険ものなんだけど、そこに出てくる伝説っていうのが面白いんだ」

「へぇ〜、どんなの?」




「やっぱり難しいよね、雨の夜に満月なんてさ」




「えー! でも、綺麗な夢だからいいや!」












「でしょう? ……今夜のおはなしは、これでおしまい」




手にした本から顔を上げて、ゆっくりと閉じた。




「……おやすみなさい。また明日ね」




 扉が閉まる音とともに、静かに灯りが落ちた。