『便りがないのは、元気な証拠』





そうはいっても、やっぱり心配なんだよ





 手紙よりも
    




 少しだけ強くなってきた日差しの中で、空になった洗濯籠の横でルイージが伸びをする。

 その正面には服やタオルといった、数少ない洗濯物がはためいていた。




「んっ、と……。いい天気だなぁ」




 もう少ししたら攻撃的になるだろう日差しを身体中に浴びて、ピクニックでも行ったら気持ち良さそうだなぁと思った。

 だが、そこまで考えて少しだけルイージの気分は凹む。

 気持ち良さそうに流れていく雲の行方を見送りながら、寂しそうにポツリと呟く。




「……兄さん、大丈夫かなぁ」




 今回の旅に出て、もう随分と経つ。

 マリオは、たまに思い出したように旅先から絵葉書を送ってきたりする。

 筆まめな方ではないから、本当にたまになのだが。

 それにしても、今回は随分と長く途絶えたままだ。

 『いやな予感』というのはないから大丈夫だとは思うが、やはり心配になる。

 しばらく雲の行方を眺めていると、目の端に見慣れた姿を認めた。




「あ、郵便屋さん!」

「あ、おはようございますルイージさん」




 笑顔で地上に降りてきたパタパタは、大き目のバッグをからっている。

 ルイージのとはまた違う形の帽子を被りなおしながら、バッグから新聞を取り出した。




「はい、今日の朝刊ですよ」

「いつもありがとう。お疲れ様」

「ありがとうございます。それじゃあ」




 ルイージが笑顔で受け取ったのを見ると、パタパタは満足したようにその場を飛び立とうとする。

 だが、ルイージに呼び止められ、その場に踏みとどまった。




「あ、あの……、郵便屋さんっ」

「はい?」

「その、僕への『手紙』は来てないかい?」

「『手紙』、ですか? ちょっと待ってくださいね……」




 そのまま空中で、大きなバッグの中身を漁る。

 しかし、しばらくしてパタパタは頭を横に振った。




「ルイージさん宛のは、きてませんね」

「そう……。ありがとう、今日もお仕事がんばってね」

「はいっ、ありがとうございます! それでは」




 今度こそ、パタパタは次の場所へ飛んでいった。

 ルイージは手に握られた一つの新聞を手に、天を仰いでため息をつく。




「……兄さんのバカ」

「誰がバカだって?」




 突然の声に驚いて振り返ると、その先には見慣れた赤い姿があった。

 それは不服そうに、ルイージの方を睨みつけている。




「兄さんっ!!」

「オレはバカじゃないぞ!」

「そんなことより、いつの間に帰ってきたのさ! 連絡もないし、心配したんだよ!?」

「たった今だよ。連絡なかったのは悪かったって」




 思わず目が潤んだルイージの肩をポンポンと叩きながら、マリオは謝る。

 その姿は、長旅でだいぶやつれているようだった。




「……今回はまた長かったね」

「まぁな。帰りに寄った町で、ちょっと困ってる人がいたから」




 ルイージはまだ何か言いたそうにしていたが、こっそりと小さくため息を付くだけにしておいた。

 すぐに、いつもの笑顔になってマリオへと手を伸ばす。




 大丈夫。

 どんな手紙よりも、自分達は次の一言で、疲れも寂しさも吹き飛ばすから。




「おかえり、兄さん」

「ただいま、ルイージ」




fin.





「ただいまとか、おかえりって、とっても大切で、強い言葉だと思うんだ」

イノウエ様より、相互お礼リクM&Lでほのぼのでした!
危うくシリアスになりそうで、削ったら短いことorz
とりあえず、「郵便屋さん、僕への手紙はきてないかい?」を書きたく、「おかえり」「ただいま」で終わりたかっただけって言う☆
ほのぼのかどうか怪しい限りですが、こんな物でよろしければもらってやってください!





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