桜、好きなんだ





『儚く散る』ってよく言うけど





それでも、あんなに綺麗に 咲き誇るからさ









春一番と桜の輪舞








 スマブラメンバー達の住む屋敷の敷地内に、数本の桜の木がある。

 その中でも一際大きな桜の木の下に、スマブラメンバー全員が集まっていた。




「それじゃあ親睦会と称した花見を始めるに至って、オレから一言……」

「能書きはいいんだよ。さっさと始めろや、馬鹿マリオ」

「なっ!? ワリオ! 人が話してるときは黙って……」

「かんぱぁーい!!」

「カービィッ!?」




 カービィの鶴の一声で、スマブラメンバーは(マリオを無視して)互いに乾杯した。

 素直に花を楽しむ者もいれば、桜そっちのけで飲み始める者、花より団子、もといご飯な者と、様々である。




「「いっただっきまぁあぁす!!」」

「待てっ! 頼むから待て! カービィとヨッシーッ!!;」




 フォックスの制止の声も虚しく、二人は一気に弁当を掻き込み始めた。

 その横では、アイクも負けず劣らず食べている。




「お前もよく食べるな;」

「ひはほほひふっほははひほ、ひふふえうはははんはいはひゃは」

「……いや、食べてる途中に聞いた俺が悪かった;」




 肉にかぶりついているアイクから目を逸らしながら、ファルコはマルスに目を向ける。

 どうやらこのやり取りを聞いてたらしく、笑顔で話に混ざってきた。




「彼は『今のうちに喰っとかないと、いつ喰えるか分かんないからな』って言ったんだよ」

「なんでわかんだよ;」

「なんとなく?」




 ちょこんと首を傾けるマルスの手には、何かのボトルが握られている。

 ビールの一升瓶とは違い、もう少し小振りで細いものだ。




「それは?」

「あぁ、これ? ワインだよ。あっちで皆で飲み比べやってるから」




 そう言ってマルスの走っていった方では、ピーチ、ゼルダも一緒になってワインの飲み比べ(むしろ味比べ)をしていた。

 一方同じ王族(?)でも、酔っ払ったクッパはマリオとワリオの喧嘩に絡んで騒ぎを大きくしている。




「もう止めてよ! 三人とも!!」

「うるさいっ! お前も混ざらんか!!〜ぃっく」

「はんっ! そんな影薄い奴、居ても居なくても変わんねぇだろ!」

「てめぇ! ルイージのこと馬鹿にするんじゃねぇ!!」




 止めようとしたルイージも巻き込んでさらに大きくなる喧嘩の後ろの桜の上では、

 キ○グコングよろしく木に乗って暴れているドンキーとディディーが居た。




「うぉっほっほー!!」

「いっえぇ〜い!」

「降りなさいっ! 二人とも!! じゃないと打つわよ!?」




 ガンポッドを装着するサムス(スーツは脱いでる)が、木の上の猿二匹に標準をあわせる。




「まぁまぁ、たまにしか出来ないんだからいいじゃ……」

「たまにでもいいわけないでしょっ!? あんたから打つわよファルコン!?」

「なんでだよ!;」




 サムスにガンポッドを向けられ、ビール片手に両手を挙げるファルコン。

 その後ろでは、子供達が鬼ごっこをしている。




「あ……、ネスさんっ! デデデさんがそっちに……」

「なんの!! 僕はそう簡単にはつかまんないよ!」

「へんっ! 甘いゾイ、ネス!! 行けっワドルディ!!!」

「あ、それ反s「反則じゃないそれ!! ねぇポポ?」

「……」(……ボクの台詞取った)

「俺様は大王だからいいんだゾイ〜!」

「うわっ! つかまったぁ〜!!」

「よっし!! 皆で反撃だ!! 行けっピカチュウ!!」

「「自分で行けよ!!」」

「君のポケモンじゃないし……;」




 子供達に混ざって遊んでいるデデデにポケモントレーナー。

 デデデなんて、いい大人だがそれでも楽しそうだ。




 新参者も多いということで、それぞれが自分のやりたいことをして過ごしていた。

 一方で、まだ他のメンバーに慣れてないのか、一人で飲んでいる者もいる。




「メータナーイトッ!」




 木陰で一人、桜の木に寄りかかりながらお酒を飲んでいたメタナイトもその一人。




「一人で飲んでてもつまんないよ〜? 一緒に食べよう!」

「……カービィか。お前が食べ物を人に持って来るなんて珍しい」




 笑顔のカービィの手から紙皿を受け取ったメタナイトは、カービィの後ろにある果物の山を見つけた。




「ヨッシーは(食べ)潰れちゃったし、そろそろデザートにしようと思って〜♪」

「……なるほど」




 その果物のさらに後ろでは腹をパンパンにして倒れているヨッシーと

 空になった弁当を手にうなだれているフォックスがいた。

 その光景が、プププランドでの光景と被った。




「……お前の周りの風景は、何処に行っても変わらないな」

「なに?」

「いや、なんでもない」

「カービィ! 今からかくれんぼするんだけど、一緒に遊ばない?」




 カービィとメタナイトのもとに、トゥーンリンクがやってきた。

 その後ろには、焦げ目やら切り傷やらでデデデが地面に伸びているのが見える。

 カービィはメタナイトのほうをチラッと見て、申し訳なさそうに答えた。




「まだデザート食べてないし! コレ食べ終わってから参加するよ!」

「そう? じゃあ早くおいでね!!」




 ネスたちのところに走っていくトゥーンリンクを見送ったカービィに、メタナイトが口を開く。




「……別に気を使ってもらわなくてもよかったが?」

「ん〜? なんのこと〜?」




 メタナイトの言葉に、素知らぬ顔で果物を頬張るカービィ。

 しばらくその様子を眺めていたメタナイトだったが、そんなカービィにポツリと言った。




「お前は、よくあいつらと仲良く出来るな」

「……それ、どういう意味?」




 りんごを食べる手を止めて、カービィはメタナイトを見る。

 その目線は、先ほどまでと打って変わって、咎める様な厳しいものだ。

 カービィのその目線から逃れるように、メタナイトは花見のドンチャン騒ぎをしているメンバーに眼を向ける。




「みんな、いい人たちばっかりだよ!みんなのこと馬鹿にするつもりなら……」

「そうじゃない」




 仮面に隠れているからか、その表情に変化はなく、一見何も感じてないかのように見える。

 だが、カービィは彼の纏ってる空気に、わずかに寂しさが混じってるように感じた。




「そんなこと、私にだってわかってる。……だからこそだ。お前だって分かってるだろう」

「……」

「遺されるのは目に見えている」





 メタナイトの言葉に、カービィは目線を落とす。

 対するメタナイトは、メンバーに目を向けたままだ。




「私たち星の戦士の寿命は、あいつらと比べて桁違いだ。陛下も長い方だが、私たちに比べれば断然短い。
 あいつらは、それよりもっと短いんだぞ。……遺される辛さは分かっているだろう」

「……」

「親密になればなるほど、その辛さは増す。……傷付く位なら、最初から会わなければ、会っても、仲良くならなければよかったと。後悔すると分かってるのに、なぜお前はあいつらと仲良くできる?」

「……それはっ」




 カービィの言葉を遮る様に、一際大きな風が吹いた。

 その風に乗って、たくさんの桜の花びらが舞う。




「わぁあぁ! 桜吹雪でしゅ〜!!」

「おぉ! こりゃすごいな」

「でも、ちょっともったいないですね……。せっかく綺麗だったのに」



 プリンや、スネーク、リンクから感嘆の声が上がる。

 メタナイトは、桜が舞う光景を見ながらカービィに言った。




「この桜も同じだ。綺麗だ何だと言って愛でても、次の瞬間には散ってしまう。
 花が全て散ってしまった木を見ると、寂しく感じるだろう。……脆くて儚いものだ」



「それは違うよ、メタナイト」




 メタナイトが桜から目を離して見たカービィの顔は、何の迷いも見られない。

 しかし、その、どこか悲しい笑顔に、自分も同じような顔をしているのだろうと思わされた。




「確かにさ、僕らの寿命は桁外れだし、いつかはぼくらだけ遺されるって分かってるよ。
 でもさ、いつかぼくが寂しくて、悲しい気持ちになったとしても、絶対後悔はしない。みんなと会えたことに、後悔なんかしない」

「なぜ、そう言い切れる?」

「みんなと居れて、幸せだから」




 先程よりは弱い風が吹き、それでも再び桜の花びらを散らす。

 辺りから、もう一度感嘆の声が上がる。


 メタナイトは、カービィの周りを桜が舞うのを見て、

 カービィがそのまま桜の中に消えてしまうかのような錯覚を覚えた。





「ぼくは、幸せな時はすぐに終わっちゃうって知ってるから。
 だからこそ、この幸せを大切にしようって思うんだよ。
 幸せなのに、幸せだったのに、後悔するなんて変じゃん。
 それに、せっかくの幸せを、みんなと出会えた事を後悔なんてしたくない」

「……」

「……みんな、この桜と一緒だよ。この桜は、こんなにも咲き誇ってるじゃん。いつか散っちゃうって、判っててもさ。
 みんなも、自分のことを脆くて儚いだけのものとは思ってないし。この桜と一緒で、咲き誇ってて。……とっても綺麗」

「……」

「カービィー!? いつまでデザート食べてんのさ〜!?」

「ん! もう食べ終わるから、もう行くー!! んじゃまたね、メタナイト!!」




手に持っていた最後のりんごを頬張ると、メタナイトに手を振ってネスのほうに走っていく。

そんなカービィを何も言わずに、メタナイトは見送る。




「『この幸せを大切にしよう』、か……」

<そんなわけで、君もかくれんぼ参加する?>




突如頭の中に声が響く。

その声は紛れもなく、カービィと共に走っていったネスのものだ。




……立ち聞きか? それとも、また勝手に人の心の中でも覗いたか?

<またって何さ。人聞きの悪い事言わないでよ〜? それよりかくれんぼするの?しないの?>

……いや、もう少し桜を楽しむことにする。この時期しか、楽しめないからな

<あっそ。そんじゃあね〜>




 それ以降ネスの声は聞こえなくなった。




「……いつもながら一方的だな、ネスは」




 コップに残っていたお酒を一気に煽る。

 そのまま、桜の木から花びらが舞う様を眺めていた。




「……フッ。私も、相当酔っているらしいな」








 酔いがまわってきたのか



 メタナイトには、風に舞う花びら達が



 幸せそうに、踊ってるかに見えた






fin.









「幸せな時は、いつもすぐ終わっちゃうね」
「……でも、だからこそ今ある幸せを大切にしよう」

たくさんのキャラいるけど、メインはカー君とメタ君です(主張
星の戦士=寿命長いっていうのは、アニカビからの設定ですね。超長い。
大王の即位300周年祭(?)があってたので、基本あの世界の住人は長寿。
でも動物達(カインリッククー辺り)は、それぞれの寿命くらいで。あ、リックやべぇww
メタ君は、亜空の時から基本一人でいたけど、これをきっかけに仲良くなってくといい。




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