理由なんて、実は至極簡単なこと。
たんに、退屈で、暇つぶしなんだ。
非日常
限られた行動範囲。狭い戦場の上で、ネスは上段に居るカービィを睨みつける。
対するカービィは、そんなネスを冷ややかに見下ろすだけだ。
その様子からは、いつもの明るい性格は伺えない。
「ねぇ、カービィ。もう、やめようよこんなこと。……皆で、帰ろう?」
「何言ってるの、ネス? ふざけないで欲しいな。ぼくはもう、決めたの」
「でも、こんなの……っ!」
「しつこいよ、ネス」
「そうだよ、いい加減諦めなよ」
カービィの影から、トゥーンリンクが姿を現した。
カービィに付き従うようにして、同じようにネスを見下ろす。
と、不意にトゥーンリンクがネスが居る場所とは別の場所に目だけをめぐらした。
「……それに、もう下手なかくれんぼは終わりにしろよ、リュカ」
「リュカ!?」
「……う、カービィもリンクも、もうやめてよ! 世界征服なんて、無理に決まってる! それにここには、他にもたくさんの英雄や勇者が……」
おどおどしつつもネスの傍に居て、二人を諭すリュカ。
だが、そんな彼のなけなしの勇気を嘲笑うかのように、トゥーンリンクが笑った。
冷ややかに見下ろすカービィが、嘲笑を含んだ顔で口を開く。
「馬鹿だね。この間の事件、このぼくがただただ巻き込まれただけだと思ってるの?」
「カービィの得意技といえば、何だ?」
「それは、相手の能力を……。まさか!」
トゥーンリンクの質問に答えかけたネスが、驚愕に目を見開く。
リュカはまだ分かってないのか、心配そうにネスを見上げるだけだ。
そんな二人に、嘲笑を浮かべたカービィが、声高々に絶望を口にした。
「そのまさか! ぼくはタブーの能力をコピーした! 他の皆はもう、とっくの昔にフィギュアだよ!!」
「そ、そんな……」
「……許さない」
まさかの事実に、唖然とするリュカ。
その隣で、俯いたネスが拳を作る。その拳は小刻みに震えていた。
「何が『許さない』だ! どうせ二人とも、ここで終わりだ!!」
「っ!!」
下段のネスに向かって、トゥーンリンクが剣を振り下ろしてきた。
高低差があったため、その剣は通常よりもスピードも威力も出ている。
だが、その剣がネスに届くことはなかった。
「リュカ!?」
「リ、リンクはボクが相手します! ネスさんは、カービィを止めてあげて!!」
「ちっ、引っ込んでろよリュカ! そんな木の棒で、何が出来る!」
ネスの前に出たリュカが、木の棒でトゥーンリンクの剣を受け止めていた。
しかし言葉と共に、食い込んだその木の棒をリンクが振り払う。
丸腰になったリュカのその目は、それでも諦めていなかった。
薄く瞳が変化して、彼の周りに妙な空気がまとわりはじめる。
「確かに木の棒じゃ君の剣には適わないかもしれないけど、ボクにはこれがある!」
牽制の意味を込めて、トゥーンリンクに向かってPKサンダーを放つ。
トゥーンリンクは、盾でガードしつつ後ろにジャンプして直撃を避けた。
「絶対に二人を止めて見せる!」
「出来るもんならやってみろ!!」
互いのPKファイアーとバクダンが交錯した。
激しい爆発を背景に、カービィがネスを見下ろす。
ネスが最後の希望を込めて、カービィを見上げた。
「……どうしても、やめないんだね?」
「しつこいって言ってるでしょ。止めたって、無駄だよ」
「そう……」
一度だけ目を閉じたネスの目は、次の瞬間には戦う者のそれになっていた。
先程まで堅く握られていた左手の指先に、ばちばちという音と共に力が生まれる。
それを見たカービィも、ハンマーをその手に出現させた。
一瞬だけ、いつもの二人がお互いを見た。
「だったら、僕がすることは一つだ。ここで二人を倒す!!」
「させないよ!! この世界のご飯は、ぼくのものだ!!」
「え、何そんな設定な訳!? そんな理由にオレ付き合ってんの!?」
「うーん、カービィならやりかねないかも;」
「ほら、よそ見してちゃダメだよリンク!!」
PKフラッシュとハンマーがぶつかり合う世界で、思わずカービィの方を振り返ったトゥーンリンクに、リュカがすかさず木の棒で脇腹を思いっきり殴った。
「へ、うわあぁああぁあぁあぁぁぁぁ……!?」
見事リュカのスマッシュが決まったトゥーンリンクは、虚しい叫びと共に場外へ吹っ飛んでいった。
「ねぇ、アイク」
「なんだ?」
「あれ、何やってんの?」
「何でも普通の乱闘じゃつまらないから、カービィとリンクが悪者っていう設定で乱闘してるらしい」
「……あぁ、そう」
至極疲れたように、ため息をついたマルスは残りの紅茶を飲み干した。
今日も屋敷は、平和です。
fin.
二人の悪役っぷりに、笑いをこらえながら書いてました(笑
短編で戦闘シーンを書いてみた結果がこれ。戦闘シーンはほとんど無い。
戦闘シーンを短編で書くのは難しいと思ってましたが、単に大乱闘させればいいだけですねわかります。
FE二人は、お茶中にそれを目撃してました。マルスはカービィの発言に疲れた。
Top