そうしてまた、





彼は歩き出すのだ。







 影で支えるもの
    





「ふわぁぁあぁ……、疲れた。そろそろ休むか」




 欠伸をかみ殺したマリオが、薄く月明かりの指す森の中に足を踏み入れる。

 野宿できそうな場所を探すためだ。

 今はクッパ城へ向かう道中。

 いつもの如く、ピーチ姫をさらったクッパを殴り飛ばして、ピーチ姫を助けに行く途中だ。

 毎度の事で慣れているとはいえ、今日は特に疲れた気がする。

 森の中に生えてたキノコを手に、食用かどうかを確認しながら休む場所を探していた。

 やっと適所を見つけたときには、いくつかのキノコと、疲労感を得ていた。

 地面に直接座って、近くの草をちぎり土をむき出しにした。

 そして、代わりに小枝を集めて火をつける。獣避けの焚き火だ。

 ついでに枝に突き刺したキノコを、土に挿して火にかざした。




「はぁああぁあぁ……」




 盛大にため息をつく。いつもの事ながら、疲れはピークに達していた。

 キノコが焼けるまでの間、地面に寝転がって夜空を眺める。

 森の中ではいつもは煌々と輝いている月も息を潜めて、星達がここぞとばかりに輝いていた。




……なんでオレ、こんな事やってるんだろう。




 ふと胸に浮かんだ疑問に対して、すぐに答えが浮かんだ。姫のためだ。

 初めて会ったときに交わした約束通り、助けを求められたらすぐに駆けつける。

 だが、それ以上に、愛した人の笑顔のためだと思う。あの笑顔に、自分は骨抜きにされた。

 とはいえ、たまに何もかもほおり出して、家に帰りたくなる時がある。

 こんな冷たい地面ではなく、ふかふかのベッドで寝て。

 こんな味気の無い焼きキノコではなく、丹精込めて作ってくれた手作りの料理を食べて。

 一人でこんな薄暗い所にいるのではなく、暖かい光の中でもう一人の大事な家族と二人で居たい。




……帰りたい。




 星空から目を離して横を向くと、焚き火が小さく燃えていた。

 それを見ながらマリオは、横を向いたまま小さく丸くなる。

 話したいことだってたくさんある。教えてあげたい景色もある。ただ一緒にいるだけでもいい。

 こんな、きつくて怪我するような事してないで、ルイージが待ってる家に帰りたい。

 ……こういうのを俗にホームシックというのだが、当の本人はまったくもって気付かない。




「……寝よ寝よ! こういう時は寝るのが一番だ。うん」




 自分に言い聞かせるようにして、いい感じに焼けたキノコを火から遠ざけた。

 僅かばかりの荷物の中から塩を取り出してかけ、一気に食べる。

 たいして時間もかけずに全て食べつくしたマリオは、再び地面に寝転がり丸まった。

 火事になる恐れもある焚き火もちゃんと消したのを確認して、目を堅く閉じる。

 さらに小さく丸まって、今度も助ける予定のピーチ姫のことを考えるようにして眠りについた。




 夢で、暖かい部屋の中、ルイージが手料理とともに迎えてくれる事を、今回もマリオは知らない。







fin.




マリオだってたまには疲れることもあるんですよ!
頑張りすぎていると、こういう心境になることあります、よね?
そういう時マリオは必ずこの夢を見るんでしょうね!そして夢の内容を覚えてない。
でも、全回復はしててまた出発できるんですよきっと!
side-Lもリク頂いたので、いつか書いてみたいと思います。



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