いつだってそうだ。






僕らは、すれ違いばっかり








 無限の空間に広がる、決意と願い
    






 真っ白な空間を駆け抜ける。

 踏み出す一歩が、確かなものかどうかも危うい。

 そんな中を、後悔を背負って全力で『赤』が駆ける。

 この先に何があるかも分からない。何もないかもしれない。

 しかし、立ち止まって考えてなどいられなかった。

 走って走って、必死に何も考えないようにする。







 次元の穴に飲み込まれた空間。

 それがこの、真っ白で何もない空間だった。

 たまに見かける『世界』の残骸が、後悔をさらに色濃く塗りつぶす。

 あの時、間に合ってさえいたらこの世界は救えたのだろうか。

 この世界に居た、たくさんの命を救えたのだろうか。


 ……いずれ、自分の世界も、このように何も遺さず消えてしまうのだろうか。


 らしくない気弱な考えばかりが胸を占め始める。








 ――やがて、その足はゆっくりと止まってしまった。

 どこまで行っても真っ白。今自分がどの辺りに居るのか、まだ続くのか、戻れるのか。

 もう、何も分からなくなってしまった。

 こんなとき、自分を現実に引き戻してくれる声も、今は……




「なんとも殺風景な空間だな」




 突然聞こえたその声。白だけの空間に、反響もせずに消えていく。

 その声に現実に引き戻された。いつもの彼と変わらず、いつもの彼とは…異なり。

 大事な声のはずなのに、思わず強張った身体で振り返ると。

 ……そこに彼は居た。

 この真っ白な空間において、その見慣れた鮮やかな緑の帽子が目に痛い。

 対して、その目を覆っている黒い布はどこまでも深い、でもどこか休まる闇に突き落としてくれそうだ。





 はじめて見た時は笑ってしまった。何やっているんだと。

 しかし、相手は手加減などせずに本気でぶつかってきた。 ……そのときの殺気も、確かなものだった。

 そして、倒した。でも、彼は帰ってこなかった。

 そこでやっと、事の重大さに気付いた。

 そしてまた、彼は再び俺の目の前に居る。見たこともないような、闇の混じった笑みを浮かべて。




「……Mr.L」

「ヨゲン書の力はすごいだろう?……伯爵が気に入らないものは、こうして全部消え去るんだ」




 両手を広げて、この空間を示すように。

 その笑みに、弟は居ない。

























「……悪いことは言わねぇぜ。オマエも消されたくないのなら、伯爵に逆らうのはやめときな」





 笑顔が引き攣ってはいないだろうか。

 このうるさい位の心臓の音は、聞こえていないだろうか。


 あいつは敵だ。なぜか無性にむかつく、赤いヒゲだ。

 そして自分はMr.L 伯爵に仕えるミドリの貴公子。

 だから、間違ってなんかいないはずだ。目の前の赤い奴を倒して、新しい世界を創る。

 なのに、この喪失感はなんだろう。小さな世界が一つ、消滅しただけなのに。

 この空間がとても哀しいものに思える。同時に、うすらさむい恐怖感。

 ……伯爵にかなうやつなんていない。

 だから言った。懇願を込めて、隠して。




(やめてくれ)




 こんなの、間違ってる。分かってる。

 敵の心配なんて、必要ないはずだ。だから理由は『オレが倒したいから』……それでいいだろ。

 なのに、あいつは揺るぎないあの目でオレを見つめる。




「そんなこと、出来ない」






















 答えなんて、最初から決まっていた。分かっていた。

 どれだけ絶望にまみれても、後悔にとり込められても、……弟だけは返してもらう。

 赤いあいつは絶対にうなずかない。『世界を護る』その正義は揺らがない。どんなに頼んでも。




「……考えを変える気は、ねぇみたいだな」




 Mr.Lの、……ルイージの目が一瞬だけ、悲しみの色に染まった気がした。

 マリオのその目に、後悔を焼いて決意が灯ったのが見えた。





いつもの、優しい弟を取り返す




ここで止める。伯爵のところなんて、行かせねぇ







「……それじゃあ、仕方ねぇな」





 みたび、戦いの火蓋は……落とされた







end.




Mr.Lが言ってた「ヨゲン書の力は〜」って言う言葉はプレイ以前から知ってたんですが、
その後の「……悪いことは言わねぇぜ。ウンヌン」っていう言葉がツボだったんです。
『絶対これは、そんな危険をおかして欲しく無いっておもってるんだ!』って妄想爆発させた結果です(笑
ちなみに物語の流れは、初めはマリオ視点、次がMr.L視点で、最後は二人ごっちゃ視点になってます。




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