君を止めたくて、君の名前を叫んだんだけれど




君はもう、声の届く距離にはいなかったんだ







君の好きな薄雲の夜






 そこに初めて来た時、始めに感じたのは驚きだった。

 僕が知ってるどんなステージよりも、あのフォーサイドよりも広かったからだ。

 なにせ、巨大な街が丸々一つ分、ステージとして収まっているのだから。




 しかし、次に感じたのは可笑しさだった。

 たくさんの建物だと思っていたそれは、ほとんどが薄っぺらいベニヤ板で出来ていたのだ。

 その事実が、また、すっかり騙されていた自分が可笑しく思えて、笑ってしまった。




 けれども、その笑いも次第に弱々しいものになっていった。


 このめちゃくちゃで、虚構ばかりの場所が虚しく思え、

 そこの空が、先日の事件と、再会した敵……否、少なくとも昔は友人だった者を思い出させたからだ。




「はぁ……」




 思わずため息が出た。駄目だ、今から一試合あるというのに。

 頭を振って雑念を追い払おうとする。集中集中。


 それなのに、あるものが目の端に入った。




「ポー、キー……?」




 自分のいる道の遥か先にそれはあった。



 キングの像



 それは先日、あの事件で見た彼が乗っていた像と同じものであった。

 あの像と違うのは、……ずっと動かず、掃除もされてないのだろう、この距離からでも埃被ってるのがわかる。






――あ、あのっ! 助けてくれてありがとう御座いました!! えっと、……ネス、さん?


――!? なんで僕の名前……知ってるの?


――……ずっとあなたの事、どこかで見たかなぁと思っていたんです。それで、ボク思い出したんです。

  ボク、ある街の映画館で、あなたの映画を見ました。やっぱり、あなただったんですね


――……僕の映画? そんなの知らないんだけど……


――えっと、その町はあいつが作った街で……






 知らず、僕は走り出していた。

 試合なんて、もはやどうでもいい。

 目指す場所はただ一つ。

 そこしかない様な気がした。




「あった……」




 目の前には、小さな映画館。

 少しあがった息を整えて、扉を押す。



 中は薄暗かった。

 否、スクリーンのみが眩しい。

 一本の映画が、上映されていた。


 見知った姿。見知った仲間。

 忘れられない冒険。




 ……いつの間にこんなの撮ってたんだろう




 頭の隅でそんな事を考えながら、目線は館内を巡る。

 映画が上映中だというのに、客は自分以外誰もいない。

 それが分かると、少し気落ちした。

 何故かは分からない。彼の造った街と聞いて、どこかで期待していたのかもしれない。

 ひとまず、その辺の席に座ることにした。




「懐かしいなぁ」




 あの一件から、もう14年。

 特にこれといった事件もなく、平和に過ごしていた。……スマッシュブラザーズ除く。

 彼に再会したのも、14年振りだ。




 ……会って、どうするつもりだったんだろう




 ここ数日、頭の中に浮かんでは消える疑問


 ただ、会いたかった。

 この14年間、気がつけば彼の姿を探す様になっていた。

 会ってどうしたいのかは、自分でもよく分からない。

 だけど、何か言いたいことがあった気がする。


 今回の件で再会はしたが、話す暇もなくフィギュアにされてしまった。

 元に戻ったときには、既に亜空間の中。

 彼はまたも、僕の前から姿を消した。



 目の前の映画は、決戦の少し前のシーンに入る。

 そこまで来て、僕は映画館を出ることにした。





 暗い映画館の中から外に出ると、一瞬周りの明るさに目がくらんだ。

 偽物の街の、偽物のネオン。それでも、それらは白々しく瞬いていた。

 外は相変わらず、薄雲が広がる夜のまま。


 この街を彼が造ったと言うのなら、この空も彼の好みなのだろうか。

 それとも、彼の心、そのものなのだろうか。




 ――ネス、お前はいいよな……。なんかお前のことがうらやましいよ

   ……。おれなんかダメさ。だけど、ネス…ま、いいよ

   いつまでも仲良くやっていこうぜ、な





「ごめん、ポーキー。……止めてあげられなくて、ごめん」






 小さく、でも痛いくらいに拳を握って、俯いてしまう。



 彼のあの言葉は、夢だったのかもしれない。


 でもきっと、彼の本心だったのだと、ネスは思いたかった。






end.











 ほとんどスマ関係ねぇ☆
 MOTHER2やってて、マジルテでのポーキー見て、さらに最後に会ったポーキー見て、心が痛くなったんです…。
 いつか小説にしたいなぁとか思っていたら、なんとスマックスで絶好の機会。
 もうメッチャ趣味はいってますね;(自重しろ☆
 でも悔いはありません。あるとしたら、MOTHERネタが強いというところですかね。
 ネスがポーキーに言いたかったことっていうのは、最後に言ってる「ごめんね」的なことです。そのつもりです(何
 納得いかない方は、想像にお任せいたします☆






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