ある人達は、食堂でお茶をしていて



ある人達は、各々の部屋でくつろいでいて





平和な喧騒を、一つの悲鳴が切り裂く






 逢魔が時の黒い影






「うわあぁあぁあ! 兄さあぁあぁん!! 助けてぇえぇええ!!」

「!?」





 突如響くただならぬ悲鳴。



 発信源は、ルイージが夕食の準備を進めるキッチンだ。

 もちろん悲鳴もルイージのものである。




「な、何だ!? 敵か!?」

「ルイージ!! 大丈夫っ!?」




 隣接する食堂で一服していたフォックスとサムスがキッチンへと続くドアへと向かう。



 と同時に、上の階から勢い良く開くドアの音と、続けて階段を何かが転がり落ちてくる音が聞こえる。




「っ!? 何が……」

「助けて助けて……うわああぁあ!! 来るなぁあぁ!!」

「おい! ルイージ!? 大丈夫か!?」

「ちょっ、何があったの!? このドア開けて!!」

「わあぁあぁん! あ、開けて開けて!! このドア開けてぇえぇ!!」




 キッチン側からドアがドンドン叩かれる。

 ドアノブもガチャガチャ回されるが、鍵が掛かっていて開かない。




「くそっ! こいつパニックで鍵のこと忘れてやがる!!」

「ルイージ!!」




 食堂のドアを壊さんばかりに開けて入ってきたのは、全身埃と傷だらけのマリオだった。

 おそらくさっきの音は、ルイージの悲鳴を聞きつけたマリオが、勢い余って階段から落ちたのだろう。

 傷だらけにもかかわらず、マリオはキッチンへ続くドアへと一直線に向かう。




「ルイージ! おい!! 大丈夫かっ!?」

「兄さん!? 兄さん助け……こっち来たぁあぁあ!!」

「ルイージ!!」

「くそっ! 埒があかねぇ。みんな離れろ!!」




 みんながドアから離れた一瞬のうちに、フォックスがドアの鍵の部分にブラスターを数発打ち込む。

 鍵が壊れたことでドアが開くようになり、中からルイージが飛び出してきた。




「兄さぁあぁあん!!」

「うぐっ、ルイージ!? 大丈夫か!?」




 ルイージは正面にいたマリオにダイブ。

 そのままマリオを巻き込み、もつれるようにしてルイージはキッチンから離れた。

 入れ替わるようにして、戦闘態勢をとったフォックス、サムスがキッチンへ滑り込む。



 だが、敵らしきものは見当たらない




「何処だ……?」

「……気を抜かないで。どっかに隠れてるかもしれないわ」

「ルイージ! 何があった!? ケガは!?」



「兄さん! アレが、アレが出た!!」




 涙を溢れさせながら訴える弟の言葉に、緊迫したマリオの顔は一転した。




「アレって……、アレか?いつもの……」

「そうだよ! アレが、……あいつが出たぁ!!」

「……」




 安堵したのか、呆れたのか。

 マリオの大きなため息を聞いたフォックスは、視線をキッチンに残したまま警戒を緩める。

 敵の姿もなければ、殺気も感じられない。



「おい?そこの双子、説明……」




ドンッドンッドンッドンッ





 突然、誰もいない空間にサムスがチャージショットを放つ。

 一点を凝視しているその顔は、こころなしか引きつっている様に見える。

 その間に、マリオはルイージを置いて食堂を出て行った。




「サムスッ!? いきなり何を……」

「嫌ああぁぁあぁあぁ!! 来ないでぇえぇぇえ!!」




 青ざめて叫ぶサムスは、全速力で食堂の机の上へと逃げる。

 その声に押されて、ルイージも慌てて机の上に登る。

 キッチンに立ち込める、チャージショットを放った後の煙の中から姿を現したのは…




「……ゴキブリ?」

「薄シ前言ったぁぁあぁ!!」




 涙を滲ませて言うルイージと、アレを交互に見比べる。




「……フッ」

「鼻で笑うなぁ!!」




 女であるサムスが嫌がるのはなんとなく分かるが、まさかルイージがここまで怖がるとは思ってもみなかった。




「怖いものは怖いんだから、仕方な……ひっ!!」

「嫌ぁあぁ!! 飛んできたぁあぁあ!!」




 振り返ると、アレがこっちに向かって飛んでいた。

 フォックスの顔が引きつる。




飛んでるアレは   さすがに嫌だ!!





バンッ





 飛んでくるアレを、誰かが横から叩き潰す。


 アレを一撃で仕留めたマリオは、手馴れた様子で丸めた新聞紙を開き、
 死骸を新聞紙に乗せて窓から外へ捨てると、アレ殺害現場を雑巾で丹念に拭く。

 凶器である新聞紙とともにビニール袋に密封し、ゴミ箱の奥へと押し込まれた。




「終わったぞ」

「本当……? 兄さんありがとう!!」

「はぁ……疲れた」




 机の上で頭を抱えてしゃがみこんでいたルイージは、マリオに飛びつく。

 隣で同じくしゃがみこんでいたサムスも胸をなでおろし、床に下りた。




「あら、あなた大丈夫?」

「……」




 サムスの視線の先には、固まっているフォックスがいた。








 後日、『ゴ』で始まる単語に異常な反応を見せるフォックスが目撃されたそうな。









fin.











友達にヒゲ双子書きたかっただけやろって言われました。
まさにその通り!
あと『薄シ前言ったぁぁあぁ!!』が書きたかった(何
兄さんは、もう、弟が何かピンチになったら全力で駆けつけるといいですw
弟は何かにつけて『兄さーん!(泣』だといい。




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