せっかくの誕生日なのに




なんでこんな






雷雨が唄う誕生日






「雨になりそうだなぁ」




 ルイージが、買い物帰りの空を見上げる。




 手にはいつも通りの大きな茶色い買い物袋。

 いつもと違う、白い箱。




「洗濯物干しっぱなしだし、兄さんもピーチ姫を助けに行ったままだし……早く帰ろう」




 ルイージは、うなるように響く音と黒く染まった空から逃げるようにして走り出した。










「最悪っ!!」




 バタンッと音を立てながら、びしょ濡れの状態で家に入る。

 黒い曇り空は、家に着く少し前で土砂降りの雨に変わった。



 ルイージがあがった息を整える背中で、激しい雨の音が続いている。




「あ〜あぁ;洗濯物全滅だよぉ」




 手にした荷物を机の上に置きながら外の様子を伺う。



 家を出るまで気持ち良さそうにはためいていた、そう多くない洗濯物が、今はもう雨に濡れて力無くだらんとしている。




「……洗濯物、一回入れないとだよねぇ。……雷鳴ってるのにヤダなぁ」






 こんな日は どうしても独り言が多くなる。



 激しい雨と雷の夜、兄が冒険に出て一人ぼっちの日は。







「……まだ5日かぁ」




 タオルで濡れた身体を拭きながら、カレンダーに近寄る。

 カレンダーには、今日の欄に大きく赤い丸が書かれている。




――せっかくケーキも買ったのになぁ。帰ってくる気配ないし。




 マリオがピーチ姫を助けに行くときは、大体1週間はかかる。




――誕生日、間に合わなかったなぁ




 ため息をつきながら、ドアノブに手をかける。

 外で濡れている洗濯物を一度取り込み、洗濯しなおすのだ。



 と、窓の外から一際眩しい光が部屋を照らした。




「ひっ!」




 耳を裂くような轟音が響く。

 と、それまで明るかった部屋が闇に包まれた。




「わぁ!!」




 頭を抱え、その場にうずくまる。



 どうやら、停電したらしい。

 真っ暗になった部屋の外では、あいかわらず雨と雷の音だけが続いている。




――や、やっぱり洗濯物は明日にしよう!!




 時折雷が部屋を照らすのを頼りに。

 タオルを頭に被せたルイージが這って移動する。

 なんとか、どこかの隙間に入り込んだ。




「……て、停電しちゃった。やだなぁ、どうしよう」




 ルイージは、隙間の中で縮こまる。






 ……こんな日は決まって




『クスクス』

「!」




 思わず耳を塞ぐ。




『クスクスクス』
『フフフフ』

「っ今日は僕一人なんだから、勘弁してよ……っ」





 何も見ないように 何も聞かないように。

 ルイージはさらに小さくなる。




 双子の兄と、決定的に違うのは身長よりも、性格よりも、この、この世のものではないものが見える能力だった。





 自分以外誰も認知できないものというのは、ルイージにとって恐怖の対象でしかない。



 それは今になっても同じである。




『フフフフッ』

「……っ」




 いつも傍に居る兄もいない。

 硬く目を閉じて、耳を塞いで。

 この時が過ぎるのを願った。














「……ィージ、起きろ」




 体が前後に揺れる。

 否、誰かに揺らされている。




「……ん」




 いつの間にか、眠ってしまったらしい。

 やさしく揺らされるのにつられて、うっすらと目を開ける。




「大丈夫か、ルイージ?」




 目の前には、心配そうなマリオの顔があった。

 ルイージが起きたのを見て、ほっとした表情になる。




「んな濡れたまんまの格好で、そんなとこで寝てたら風邪引くぞ」


「兄、さん……?」




 寝ぼけているのかと、ルイージは目を擦るが、目の前の兄の姿は変わらない。

 いまだに真っ暗な部屋を、手にしたファイアボールで照らしている。




「ったく、雨の中走って帰ってきたら家が真っ暗じゃないか。何事かと思った」

「な、なんで……。ピーチ姫を助けに行ったはずじゃ……」

「今日は俺等の誕生日だろ? さっさと行って、さっさとぶっ倒してきた」




 マリオは、ファイアボールを出してないほうの手でルイージを引っ張り起こす。

 雷は遠ざかったのか、今は静かな雨の音だけが聞こえる。




「っていうのは半分嘘。ほんとはクッパが姫を解放してくれたんだけどな」

「え?」




 投げ渡されたタオルを受け取りつつ、耳を疑う。


 あのクッパが?




「クッパ城まであと半分というところで、城の方からピーチ姫が一人で歩いてきたんだ」




――私が『マリオが誕生日に間に合わない』って文句言ったら、
       散々うなった挙句に帰れって。きっとプレゼントのつもりよ




「で、姫を送り届けて、走って帰ってきたってわけだ」

「プレゼントは、ありえないだろうね」




 ファイアボールの明かりだけが頼りの中で、二人は顔を見合わせて笑う。


 タオルで身体を拭き直し、着替えたルイージは、マリオと代わってファイアボールを出す。

 その目の端に光るものが、明かりに映し出される。


 マリオは見ぬフリしつつ着替え終わると、二人は居間に向かって歩き出した。




「でも、兄さんが早く帰ってきてくれて本当よかった。雷鳴ってるし、停電になるし、怖くて……あぁ!!」

「どうした?」

「走って帰ってきたから、ケーキが……」




 白い箱の中から現れたケーキは、端のほうに寄ってしまって形が崩れていた。

 マリオは、そんなことは気にも留めず、横に置いてあったロウソクを並べてさしていく。




「別に食べれりゃ問題ないだろ」

「せっかく綺麗だったのに……」

「今度はお前が作れ」

「無茶言わないでよ!」




 なおもブツブツ言うルイージを無視して、マリオはロウソクに火を灯す。

 ファイアボールを消すと、部屋は再び暗くなった。

 ロウソクの明かりだけが、ぼうっと浮かび上がる。

 と、またもパニックになりかけたルイージの腕をマリオが掴む。




「落ち着け」

「もうっ! 灯り消すなら一言言ってよ!!」

「ロウソクの明かりがあるだろ。それよりほら、ロウソク消すから願い事考えとけ」




 再びパニックにならないようにと、二人は手を繋いだままロウソクの前に立つ。





「「せーの」」




           ”ハッピーバースデー!!”













再び暗闇に包まれた家の、遠くの空で



また雷が、ゴロゴロと鳴いた。







fin.










単に兄弟愛書きたかっただけでs(爆
でも、なんか最後のとこがいまいち…?
しかーも、ここでルイージの霊感話いるかいな;っていうねorz
姫は定期的にさらわれてます;
ピノキオたちもがんばってんだけど、クッパには屁のかっぱ(笑
そしてクッパも、兄さんにとっては屁のかっぱw(何
ピーチも、なかなか楽しんでるようですよ♪





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