いつだって








 この声が、オレを支えてくれた











 「ただいま」までの言葉
    






 たとえば、とても大変な冒険が終わって、いつもの笑顔で城まで姫を届ける。

 だけど姫と別れた後、一人になると、それまでの疲れが一気にやって来るんだ。

 怪我もしてるし、服もボロボロだし。家までフラフラだ。




「おかえり兄さん!」




 そんな時、いつもと変わらない笑顔で迎えられると、その疲れが一気に軽くなる気がするんだ。

 そして家に入ると、もう既に二人分の食事の準備がされていて、いい匂いがしてて。

 いつも帰ってきたら腹ペコだから、荷物をベッドに放り投げて、いそいそとテーブルにつく。




「それじゃあ、いただきます!」




 何よりオレが嬉しいはずなのに、何故かあいつのほうが嬉しそうで。

 買い物でキノピオに値引きしてもらえたとか、街で偶然見つけたおいしいキノコ料理店とか。

 なんでもない、他愛の無い話で、食事中はずっとあいつが喋りっぱなしだ。

 話したいこともオレの方がたくさんあるはずなのに、その様子を見ているともう、どうでもよくなる。

 あいつの作った料理を口にすると、あぁ、家に帰ってきたんだなぁと実感するんだ。




「ごちそうさまでした! 兄さん、先にシャワー浴びてきなよ」




 その言葉につれられて、オレはシャワーを浴びに行く。

 久しぶりのまともな風呂に、心身共に緊張が緩んだ。

 頭から湯気をたたせてリビングに戻ると、あいつはいつの間にか食器を片付け終えていて、オレの荷物も片付け終えようとしていた。

 自分でしようと近づくと、兄さんはさっき帰ってきたばっかりなんだからゆっくりしてなよ、とかなんとか言ってさっさと自分で終わらせるんだ。

 あいつがシャワーを浴びてあがってくる間に、テレビをぼーっと見ながら冒険を振り返る。

 そしてあがってきたあいつと温かいミルクティーを飲みながら、今度はオレが話しをする番だ。

 そのまま、オレが話し疲れてうとうとするまで話は続く。日が変わることだって稀じゃない。




「それじゃあ兄さん、おやすみ。今日もお疲れ様」




 二人で色違いのパジャマとナイトキャップを身につけ、色違いのベッドに横になる。

 二つのベッドの間にあるベッドライトを消したら、数秒と持たずに夢の中だな。

 冒険から帰った日は必ず、冒険の間に見たどんな夢よりも楽しい、幸せな夢が見れる。




「兄さん、おはよう! 今日もいい天気だよ」




 太陽の光に起こされて、目を開けばあいつが笑顔で隣にいる。

 そしてまた、おいしそうな匂いがキッチンから漂ってくるんだ。




 そうやっておやすみとおはようを何回か繰り返していると、また新たな事件が舞い込んでくる。

 オレはいつものように、準備もそこそこにドタバタと家のドアを開ける。

 そうしてまた冒険に出るオレの背中を、あいつの声が押すんだ。




「いってらっしゃい兄さん! 気をつけてよ! 頑張ってね!」




 だからオレは、振り返らないで、ある言葉だけを残して、新たな冒険に出る。




「あぁ! いってきます!」












「なんというか、ルイージは完全に奥さんだな」




 昼食後の食堂で、ルイージの片づけが終わるのを待っているマリオに、スネークが呆れ顔で言ってのけた。

 二人の目の前には食後の紅茶。他のメンバーは足早に食堂を後にしていて、ここには二人しか居ない。




「いや、あいつは奥さんと言うよりも」




 キッチンのドアのガラスから、片づけをするルイージの姿が見え隠れする。

 何がそんなに楽しいのか、上機嫌で外れた鼻歌を歌っている姿は、家だろうとこの屋敷だろうと変わらない。




「お母さん、だろ」

「それもそうだな」




 お互い妙に納得したところで、残りの紅茶をすすった。


 キッチンからは今も、外れた鼻歌が聞こえている。






fin.




「挨拶って、とっても大事なものなんだよ(そして強い言霊」

はい、スマ小説とは名ばかりの、実質ヒゲ小説でしたすいませんor2
シチュ的には、ルイージ待ってる間、マリオがスネークに日常の話をしてる感じ。
そしてルイージはお母さんです(マリオは手の掛かる息子



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