「もー、聞いてよ。兄さんったらさ……」




 汗をかいたグラスが、カランと鳴った。







 ティータイム
    




「ここのところ珍しくずーっと平和で、ちょっと暇だったんだよ」

「あら、それはよかったじゃない」




 にっこり笑顔でそう声をかけるのはデイジー。

 平和なのは良いことだ。こうしてルイージの元に、人知れず遊びに来ることが出来るのだから。

 しかし、デイジーのそんな思いも知らずに、ルイージはぷんぷんしている。




「そうなんだけどさ……。でも、兄さんったら全く家事手伝ってくれないんだよ!
 この間だって、買い物行ってる間にサラダ作っててって頼んで行ったのに、
 帰ってきたらソファでぐっすりだよ!」

「それはルイージの作るサラダの方が美味しいからじゃない?
 それに、きっと冒険で疲れてたのよ」

「冒険から帰ってきて、一ヶ月も経ってるんだよ! 自分で出したものも、全部僕に片付けさせるし……」

「あら、私もお城の人たちが片付けてくれたりするわよ」

「僕は召使じゃないよ……」




 がっくりと肩を落とすルイージだが、それでも兄への不満は尽きないようだ。

 再び顔を上げて、涙目になりながらデイジーに訴える。




「洗濯物だって、僕が干してる間に兄さんは一人テレビ見てるしさ。
 暇だーってごろごろしてるくせに、おやつが無いって僕に言うんだよー!
 暇なら買いに行けばいいのに……。クッキー作ったけど」

「ルイージ」




 いつの間にかふてくされた様にテーブルに突っ伏していたルイージに、
 デイジーが優しく笑いかける。

 たまにはこんな、素直じゃないルイージを見るのも面白いかもしれない。




「マリオが冒険に出かけて、またお留守番で寂しいのね」

「……うん」




 関係ないデイジーに不満をぶつけていた自分が、そして図星を指されて恥ずかしくなったのか、
 紅くなった顔を隠すようにうずめた。

 この家には二人だけ。肝心のマリオは昨日、クッパの悪行を聞きつけて家を飛び出していった。



「……ごめん」

「本当にね。私といても、寂しさは紛らわせられないかしら!」

「そ、そんなことないよっ!! わわわ、デイジーごめん!」

「ふーんだ!」

「ご、ごめんよデイジー! 久しぶりに会えて、ほんとに嬉しいよ!」




 ツーンと背けられた顔には、いたずらっ子のような笑みが浮かんでいた。

 そのことに気付かないルイージは、ひたすらごめんと続けている。

 滅多に見られないルイージの一面を見れてちょっと嬉しかったのだが、
 このまま機嫌を損ねたフリをしていたら、ルイージの分のケーキまでもらえそうだ。

 ルイージの作るケーキは、お城の誰が作るケーキよりも美味しい。

 名案に、デイジーは少し笑った。





 そんな、初夏のティータイムのこと。





fin.




オチなし^q^
ただ単に、ルイデジ&珍しくマリオに不満たらたらなルイージが書きたかっただけです。
にしても、久々の更新がこれって……; なまったなぁorz

2011.8.8

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