寂しくないと言ったら





嘘になるけど






とりあえずは、がんばれそうだ








 月明かりに照らされて





 夜、月明かりしかない神殿にひとつの影があった。

 濃い目の青いショートヘアと、長めのマントがたなびいている。




「マルス、こんな所に居たんだ」




 その声に振り返ると、緑を貴重とした衣服に包まれたリンクが立っていた。

 帽子はかぶっておらず、短く切った金髪が月明かりに反射してきらきらと輝く。




「リンク。君こそどうしたんだい?」

「どうしたもこうしたも、誰かさんが出て行った気配がしたから追いかけてきただけだよ」




 あくびをしながら、そう言う。

 その様子に、7年前の景色が被った。




「また何か悩み事か?」

「今回は違うよ。ただ、ね……」




 リンクから目を離し、欠けはじめた月へと目線を戻す。

 再びこの世界に巻き込まれてから覚えた、新たな喪失感。

 幾度も経験しているはずなのに、それでもなおきついと思える程の。

 リンクのいる方向から小さなため息が聞こえた。




「……ロイか」

「……うん」




 今回の事件で、再び会えたかつての仲間の中に彼はいなかった。

 この神殿で、よく三人で訓練をしたものだ。




「しょうがないだろ。……別に死んじゃったわけじゃないんだし」

「不吉な事言わないでよ! ……その通りなんだけどさ、なんか」




 月明かりが眩しい。そう思って、マルスは月を見つめる目を細めた。

 リンクもマルスから目をそらし、同様に月を眺める。




「寂しくてさ。ずっと三人で居たろ? なんか、ここにいるとあの頃を思い出しちゃって……」

「まぁ、そうだけどさ。……今、どうしてんだろうな」




 二人して並んで月を眺める。どこかで彼も、この月を見てるのだろうか。

 時折吹く風になびく髪が、月明かりできらきらと反射する。




「……無事だといいんだけど」

「そうだな」

「……こんな所にいたのか」




 突然二人の後ろから声がした。

 振り返ると、マルス同様濃い目の青い髪とマントをたなびかせたアイクが立っていた。





「アイク」

「アイクさん」

「こんな時間に、二人して散歩か。……何かあったか?」




 アイクのその言葉に、二人は顔を見合わせる。

 かつて、7年前にもここで同じことを聞いた。それを言った彼は、此処にはいない。

 ふと笑みがこぼれた。月を眺める。

 あの時は、なんて言って答えたんだっけ。




「なんでもないよ」




 月明かりに照らされて、微笑む二人がどこか悲しくみえた。

 しばらく二人を眺めていたアイクだったが、小さくため息をついて言った。




「……わかった、ならいい。だが一つだけ、いいか?」




 二人は思い出から抜け出して月から目を離し、アイクを見た。

 アイクもいつも間にか一緒になって月を眺めている。





「……俺はお前等じゃないから、何を考えてるかなんて、絶対判らない。

    だから、何かあったときは言え。……仲間なんだから」


――オレは、お二人じゃないから、お二人が何考えてるかなんて判りません。

    でも、オレ達は……仲間なんですから、何かあった時には言ってくださいよ。





 7年前の彼がフラッシュバックする。

 月明かりに照らされたアイクが、彼と被った。




「……ぷっ、ふふっ」

「……あ、ははっ!」

「……?」




 しばらく唖然としていたマルスとリンクは、互いに顔を見合わせて笑い出した。

 何か変なことでも言っただろうかと、アイクはきょとんとしている。




「……どうした」

「いや、まさか、ここまで綺麗に被るとは……っ」

「でも、アイクの方がすごいって! アレを平然と言ってのけるんだもん! ロイは真っ赤になってたのに……っ」




 二人に似つかわしく、腹を抱えて大声で笑っている。月明かりの神殿、という雰囲気が台無しだ。

 しかし、それよりも気になった事があって、アイクはリンクに顔を向ける。




「リンク……今、呼び捨て……」

「あ、あぁ、ごめん。こっちが素なんだ。何ならいつも通りでもいいですけど、アイクさん?」

「……いや、いい。それより、何笑ってる」




 笑われるというのは、正直気持ちの良いものではない。

 アイクが少々ブスッとしながら、二人に説明を促す。

 笑い過ぎて目の端に浮かんだ涙を拭きながら、マルスが説明を始める。





「7年前にも、こんな事があったって言ったでしょ? その時に一緒にいた少年、ロイっていうんだけど……」







 月明かりに照らされて、思い出話に花が咲く



 長い夜が 更けていく








fin.





「俺はお前じゃないから何考えてるか判らないけど、仲間なんだから言ってくれ」

何が書きたかったんだ☆って感じです。
リンクとマルスが、アイクとのやり取りでロイとの思い出がフラッシュバックする感じで。
テーマは、想像は出来ても、絶対分からない→言ってくれなきゃ分からない→仲間なんだから頼ってよ!
リンクはDX持越しです。で、元々は敬語なんて使わない子だったのが、ゼルダに会ってから皆に礼儀として敬語に。
マルスやロイとは、いつも訓練してたからそんな必要ないかなって。面倒いし。
ロイもアイクも、このシーンがリンクが心を開いたきっかけだといいよ!!




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