「……くしゅんっ」






 目の前に広がるたくさんのお菓子や食べ物は、一瞬で姿を消した。








 ゆきび
 雪日
    





「……」




 ぼんやりとした頭で、でも確かに絶望を感じていた。……あぁ、ぼくのご飯。

 また出てこないかと僅かな希望を探して、薄っすら開いていた目を再び閉じた。

 ……こころなしか、寒い。いや、絶対寒い。それも物凄く。


 唯一ここにあるぬくもりを感じようと、布団を頭まで被って丸まった。元から丸いが。

 軽く鼻をすする。いろいろ快適になったので、再び心地よいまどろみに身を委ねようとした。




「……おいっ! カービィ!! 起きろ!!」




 突然、ドンドンッと扉を叩く音と共に、そんな声が聞こえた。

 ……いや、気のせいだきっと。聞こえてないようん、だってまだ眠い!

 そう決め込むことにして、目をより固く、布団を握る手もぎゅっと力を入れた。

 しかしそんなカービィにお構いなく、勝手に扉を開けて声の主が入って来る。しかも二人。

 この世界に「鍵」なんて概念は、ない。

 扉を開け放ったことで、一気に室温が下がった。

 最後のぬくもり、布団を握ってさらに丸くなる。……ぅ、さむいっ!




「おい、カービィっ! 早く起きろって、早く早く!!」

「……〜っ、まだ眠いよぉ。さむい〜……」

「なんで寒いのか考えてみろよ? ほら起きろって、雪だ! 外は一面銀世界だぞ!」

「え、ゆきっ!?」




 その一言で、布団の丸い塊は一目散に外へと飛び出していった。

 その様子を、マフラーや手袋で防寒したリックとクーが笑いながら見送る。




「うわあぁ〜!」




 目の前には眩しいくらいの白い世界。リックの足跡以外、何一つ汚れのない銀世界(クーは空を飛んで来たようだ

 ふわふわと綿のように見える雪は、苺シロップを掛けて食べたらおいしそうだ!

 まるで雲の上のような純白の上に、ぽんぽんぽんと足跡を付けてみた。

 結構な雪が積もったらしい。足は深くふわっと沈んだ。というか……。




「……さむーい!!」




 バタバタと白い雪を軽く巻き上げて、カービィが家の中へ駆け込んできた。

 それを見て、リックとクーが声を上げて笑い出す。




「うぅ〜……」

「馬鹿だな〜、そんな格好で当たり前だろ!」

「ほら、ちゃんと手袋とかつけて」

「うん、ありがとう!」




 いつの間に用意していたのか、クーから手袋やイヤマフを受け取り身を包む。

 一瞬にして冷えてしまっていた体に、ぬくもりが戻ってくるのを感じた。




「ふわ〜、つめたかったぁ」

「そんな格好で行ったら、当然だろ」

「カインは今日は家にいるってさ。池も厚い氷張ってたしな」

「本当っ!? あとでスケート行こ!」

「とかいって、どうせオレの上に乗ってんだろ?」

「わっ」




 ひょいっとつかまれて、リックの頭の上に乗せられる。

 そこはとても暖かくて、思わずぎゅっと顔を近づけた。




「ゆきだるま! 雪だるまつくりに行こうよ!!」

「そうだな! 絶対オレの方が大きいの作るからな!!」

「む、ぼくの方が大きいの作るもんねー!」




 リックの頭をぽむぽむ叩いて、外へ出るように促す。

 外へ出た瞬間から、二人の勝負は始まっていた。我先にと雪玉を作り始める。

 リックはまだしも、カービィはあんな素足で寒くないのだろうか?

 でもあの楽しそうな表情を見ていると、そんなことは些細なことらしい。




「……さて、じゃあ俺も作ろうかな」




 そう笑って雪に降り立ち、クーも雪玉を作り始めるのだった。














「見てみてー! ぼくの雪だるま!!」

「おぉー! すげぇな! 主にフルーツが」

「おいしそうでしょー!!」




 顔の部分がフルーツで出来ている雪だるまの前で、えっへんと胸を張るカービィ。

 カービィどころかリックの身の丈ほどもある大きな雪だるまが、一時間かけて完成されていた。
 
 自信満々に笑うカービィの顔は、寒さで鼻の辺りが少し赤くなっている。




「まぁでも、オレのほうが大きいけどな!」

「むっ!」




 同じく自信満々に胸を張るリックの横には、彼の背丈の倍はありそうな巨大な雪だるま。

 悔しいことにカービィは、かなり見上げなければその雪だるまの顔を見ることは出来ない。

 はぁと白い息が視界を登っていった。




「……ずるいよっ! もとからリックのほうが大きいんだもん! おでぶー」

「なっ! カービィには言われたくねぇ!」

「わっ来た!」




 慌てて方向転換して逃げようとするも、ここは身の丈ほどもある雪の中。

 幾ばくも走らないうちに、視界は真っ白になってしまった。




「〜っ!!」

「あぁもうほら、大丈夫か?」

「うん、ありがとう。……あれ、そういえばクーは?」

「あれ、そういえばどうしたんだろ」




 二人が見回すと、少し離れた所で満足そうに何かを見ているクーの姿が。

 何を見ているのかは、ちょうど木の影になってしまって見えていない。




「クー!」

「何してんだ?」

「やっぱり俺って、天才だな。見ろ!」

「「うっわぁ……」」




 クーの目の前には、もはや雪像とでも言うべきものが立っていた。

 かなりかっこいい梟の像だ。それにかなり細かいところまで手が込んでいる。美化120%と言ったところか。

 胸を張ったクーは、自信満々と言うよりはキザな様子で決めていた。




「クー、凄いね!」

「よくこんなもの作ったな……;」

「まぁ、俺にとっては当然だけどな」




 羽根をきざっぽく流して言うクーに、他の二人はチラッと目を合わせた。

 同時ににやっと笑う。そしてクーの後ろの木を指差した。




「「あーっ!!」」

「ん、なんだ?」

「えいっ!」

「そりゃ!!」




 後ろを振り返った瞬間に、カービィとリックは手の平大の雪玉を作ってクーの雪像に投げつけた。

 二つの雪玉は、雪像の顔と翼に当たって精緻なそれをボロッと崩す。




「あーっ!!!」

「にげろー♪」

「何してんだ、てめぇらっ!!」

「おぉ、怖ぇ怖ぇ!!」




 笑いながら逃げる二人。そんな二人に、クーも同じように雪玉を作っては投げつける。

 今度は空を飛んで逃げるカービィだったが、途中で方向転換した。




「ついでにリックの雪だるまも、いただきまーす♪」

「あーっ!!」




 顔を作るのに、みかんやらにんじんやらを使っていたのが災いした。

 カービィはその小さい体に似合わない大口を開けて、雪だるまの顔部分を一口で飲み込んだ。




「みかんとよく合って、おいしーvv」

「せっかく作ったのに! これでも喰らえっ!」

「ぶわっ!」




 幸せそうに雪を味わっていたカービィの顔に、リックの雪玉が直撃する。

 そこにすかさず、クーからの雪玉も飛んできた。




「うわっ、もう二人してひどわぁっ!」

「先手必勝ー!!」

「さっきのお返しだ!」




 顔を振って雪を払っていたカービィに、間髪いれずにたくさんの雪玉が降ってくる。

 小さなカービィの体は、すぐに雪の山になって埋まってしまった。




「どうだ!!」

「せっかく作った像だったのに……。次はリックお前だ!」

「わわわっ」

「……ぼくも、怒ったぞー!!」




 雪山の中から飛び出してきたカービィが、辺りの雪を吸い込みにかかる。

 ある程度吸い込むと、今度はぷぷぷぷっと数多くの雪玉を二人に向かって吐き出した。




「うわわわわっ、待った待った!」

「お前、それは反則だろ!」

「戦場には反則も何もないのだっ!」

「何だよそれー!!」




 わぁわぁと始まった雪合戦。

 白い雪と白い息を散らしながら、真っ白な時間は過ぎていく。



 真っ白な思い出に、笑い声と色が付いた。







fin.




はい、オチなしー。ただ単に、星カビでほのぼのが書きたかっただけって言う!でって言う。
私の星カビ起源がデデププなこともあってか、カビとフレンズ三人組のセットが本当に好きすぎます!
特にリック!とクーがどっこいどっこい!(何
え、カインですか?……口調がまだ、定まってないんですよ;
この場に来て「んぼ〜っ」はちょっと考え物でして;

……でも満足!




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