眩しい日差しの中に





あの頃の匂いがした






 心はいつも傍にいるから






 キノコ王国の外れにある家から、トントントンとリズムよい音が聞こえる。

 ついでに煙突からは、かわいらしい煙が空へと旅立っていく。

 家の中では、マリオが英雄とは呼べないようなだらしない顔で、ソファに横になって寝ていた。

 片足がソファからずり落ちている。

 キッチンではルイージが、一口大に切った野菜を大きな鍋に入れたところだ。

 そのままコンロの火を弱火にして、キッチンから出た。

 片手には、一冊の本を持って。




「後は煮込むだけだー。今のうちに読み終えちゃおうっと!」




 伸びをしながらマリオの居るソファに向かう。

 起こさないように注意しながら、そのソファの端に座った。

 しおりを挟んでいたページを開き、本の世界に飛び込んだ。










 少し地面が揺れた気がして、目が覚めた。

 当然だ。今まで自分が寝ていたところはソファの上で、そこにルイージが座ったのだから。

 ルイージといえば、マリオが起きたのに気付いたのかいないのか、黙々と本を読み進めていく。




「……ふぁあぁ」

「……」




 マリオが一つ欠伸をする。だが、ルイージは変わらず本を黙々と読んでいるだけだ。

 反応がなかったのが少し癪で、本を読んでいるルイージに背中から寄りかかった。




「ねぇ、重いんだけど?」

「暇だー」

「僕は暇じゃないよ」

「……暇だー」

「だったら、水やりしてきてよ」

「面倒臭い」

「誰のための薬草だと思ってるのさ」




 ルイージの突っ込みのチョップを受けながら、窓の外へと目をやった。

 そこには色とりどりのハーブやらなにやらが、気持ち良さそうに風に揺れている。

 蒸し暑い夏場でも、そこから吹いてくる風は清涼で気持ちの良いものだ。




「あ、そろそろかな?」

「ん?」




 ルイージが本にしおりを挟んで立ち上がる。

 急に立ち上がるもんだから、ルイージに寄りかかっていたマリオは背中からソファの上に倒れこんだ。




「うえっ」

「ほら、そろそろ夕飯できるからさ。机の上、片付けておいてね」




 仰向けに倒れているマリオの、丸い鼻の上に読みかけの本を置く。

 そのままでは落としてしまうから、マリオは慌ててその本を手に取った。

 何の本を読んでいるんだろうと何気なく本を開くと、中からしおりが落ちてきた。




(やべっ)




 そのしおりが床に落ちる前に、キャッチする。どのページから落ちてきたのだろう?

 だが、そんなことよりもしおりの方が、否、しおり代わりの一枚の写真の方に意識が向いてしまった。

 いつ撮ったのかも覚えてないが、家の前で二人並んで撮った写真だ。

 自信満々の笑顔でピースをする自分と、ほのぼのとした笑顔のルイージ。

これが、この双子の違うところだ。

 並んでみると、身長の差がはっきりする事に苦笑する。

 随分と使い込んでいるのだろう。端々が擦り切れたりして、くたびれている。

 マリオは小さく笑いながら、つなぎの胸ポケットに手を伸ばす。

 中からは一枚の写真が出てきた。

 写真の中では、同じように双子がそれぞれの笑顔でこちらに笑いかけている。


これが、この双子の同じところだ。胸を張って言える。


 ルイージの消えたキッチンからは、甘い感じの匂いが漂ってくる。

 あぁ、これは……




「ルイージ、今日の夕飯なんだ?」

「今日? シチューだよ。キノコたくさん」

「よっしゃぁあぁ!」




 ガッツポーズを決めたマリオのもとに、早速二つのお皿が運ばれてきた。

 中にはできたてのシチューが、なみなみと注がれている。

 そこから生まれる湯気が、いっそう空腹感を感じさせる。




「もう、机の上片付けといてっていったのにー」

「すぐ終わる!」




 写真をすばやくポケットに仕舞いながら、机の上の片付けに取り掛かる。





 この家から、『いただきます』の声が聞こえるまであと少し




fin.





双子はあんな感じで、ほんのちょっとだけそっけない感じのイメージ。
でも、お互い一番大事にしていて、何かあったら飛んでくよ!!
自分ちのDr.設定は、兄貴はヤブ医者ってか民間療法って言うか、応急処置系が得意な感じ。外科寄り。
ルイージは怪我の手当ても出来るけど、どっちかというと『薬(草)』に強いイメージ。
何かしてないと落ち着かない彼は、薬草作ってるといいよ(希望



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