一年に一度、私の大切な人へ。









 
 貴方に贈る、甘い想い
    








* 不器用でお騒がせな迷惑大魔王様へ








「クッパ」




愛しのピーチちゃんに呼び止められたのは、朝食の少し前。

ちょっと不機嫌そうなその声に振り返れば、気難しそうに眉根を寄せた想い人がいた。

はて。今日はまだ、彼女の機嫌を損ねるようなことはしていないはず。




「どうしたノダ」

「……コ」

「うん?」




小さな声で、なにか呟いた様だったが、うまく聞き取れなかった。

後ろ手に顔を俯ける彼女へ一歩、歩み寄る。




「なんダ?」

「……っ、チョコレートよ! あげるって言ってるの!」




ぐいっと差し出された手には、ピンクの小さな紙袋が一つ。

目を丸くして見下ろす彼女の顔は、やはり不機嫌……ではなく、照れ隠しだったのだと気付いた。




「ピーチちゃ「義理よ」




自分の弾んだ声は、語気の強い否定の声に遮られた。

キッとした表情で見上げられるが、その上目遣いがまたかわいい事に、当の本人は気付いていない。




「マリオとルイージにはもうあげてきたし、他のみんなにも用意してるわ。勘違いしないでちょうだい」
「はいはい、わかってるノダ」
「それから」




彼女のドレスそっくりなピンク色をした紙袋を受け取ると、彼女はすぐにそっぽを向いてしまう。

自分には少し小さな、彼女にとっては少し大きめな紙袋は、ちょっとした重量感があった。




「Jr.の分も入ってるから、送ってあげなさいな」

「……」

「……なによ」

「……いや、ありがとうなノダ」

「義理チョコよ!」

「はいはい」