二周年記念
胡蝶の夢
ところが、出るなと言われれば言われるほど出たくなるのが人の性というものである。
リンクが出て行った後しばらくは、部屋で大人しくしていたが
廊下で聞こえるバタバタとした足音を聞いているとうずうずしてしまい、再び探索に出かけることにした。
しばらく人に見つからないように歩いていると、ある部屋から一際大きな声が聞こえてきた。
きゃいきゃい聞こえるその声は、恐らく子供くらいの年頃だろう。
少しだけ覗いてみようと思い、少しだけそのドアを開けた。
「ねぇカービィ、やめようよこんなこと……!」
「そうだよ! 世界征服なんて無理に決まってるよっ!!」
「いやだね。誰が止めても無駄だよ……!」
なにやら物騒な会話がなされている模様。
思わずドアを開き、部屋の中へ入ってしまった。
「世界中のご飯はぼくんだっ!」
「いや、それ台詞違うから」
「その設定から離れろよ、……っ!?」
「え……あっ!」
薄い冊子を手にしたカービィ、ネス、トゥーンリンク、リュカが一斉にこちらを振り返る。
数瞬の間をおいて、4人がわぁわぁと慌てだした。
「え、ちょっともうそんなじかんだっけ!?」
「うーわわ、どうしよう! まだ全然セットとか終ってないよ!」
「お、落ち着けよ! まだ時間じゃないはずだ!」
「わああぁ! まだ、まだ入ってきちゃだめですよー!!」
リュカに背中を押されて、部屋から追い出されてしまった。
そんな自分の背後から、4人のぼそぼそとした声が聞こえてくる。
「だ、大丈夫かな……。さっきの聞かれてないかなぁ」
「うーん、もしかしたら聞かれてたかもね」
「ど、どっちにしても時間がないし、台詞練習してるだけじゃだめだっ!」
「そ、そうだね……。早く舞台セットの準備しましょう!」
そんな会話が聞こえてからは、やれ剣は何処だ木は何処にあるとバタバタ騒ぐ音が聞こえてきた。
会話の内容から察するに、どうやら劇か何かの話のようだ。ほっと胸をなでおろす。
これ以上話の内容を聞いてしまうのも忍びないため、探索の続きに出かけることにした。
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