まだまだ




まだまだ




終わらせないよ









 夜蝶
    03








黒い綿の中から生まれた兵士をマリオ達が次々と倒していく。




「楽勝楽勝〜。雑魚だねぇ〜」
「だが、数が多すぎるっ!!」




カービィは、辺りをピョンぴょん飛びはねる様にして攻撃をしていた。
一方、魔力温存のためか、ゼルダはシークに変身して素手で兵士達に向かっている。




「大丈夫ですかっ!?ピーチ姫!!」
「問題ないわ!!」




辺りにウジャウジャいる兵士達に、ピーチボンバーをかましているピーチが応えた。
その様子を見て、同じく素手で立ち向かっているマリオが再び声を上げる。
心なし顔が赤い気がするのは、気のせいだろうか。




「仮にも一国のお姫様が、敵にそんな技かまさないでくださいっ!!」
「最近のあなた、キノじいよりうるさいわよ」
「あっれぇ〜?マリオ〜、本当に一国のお姫様だから止めてほしいの〜?」
「もっと違う意味合いが含まれてるんじゃないかい?」
「だまれ外野ぁ!!」(恥




こんな状況だというのに、カービィとシークは意味有りげにニヤニヤと笑っている。
そんな二人にマリオはファイアボールを投げつけるが、周りの兵士を数人飛ばしただけで
二人は軽々とかわす。ニヤニヤしたまま。






―――それにしても




すぐさま頭を切り替えてカービィが、周りの兵士たちをなぎ倒していく。
自分からずいぶん離れた右前方にいるシーク、ピーチボンバーで体当たりを連発してるピーチに疲れが見え始めていた。
自分の後ろでも、荒い息遣いが続く。
スタミナだけは人一倍あるマリオも、カービィと一戦した後にはきついのだろう。
反面、一度吹っ飛ばされてダメージがリセットされた自分はまだ余裕である。

しかし、雑魚レベルとはいえ兵士たちは無尽蔵に出てくる。




―――このままじゃ、三人の体力がもたない




「マリオッ!!ボム兵持ってない!?」
「はぁっ!?…一つだけ持ってるけど、せいぜい2、3人ふっ飛ばすしか…」
「ぼくに向かって投げて!!」
「はぁっ!?」(二回目




マリオはカービィの発言に耳を疑った。
そんな事をすれば、カービィ自身も爆発に巻き込まれてしまう。




「おまっ、それじゃ巻き込まれんぞっ!?」
「いいから早く!急いで!!」
「…あぁ、もう!どうなっても知らねえからな!!」




やけくそ気味にボム兵をカービィに向かって投げつける。
マリオはカービィの元での爆発を予想していたが、
ボム兵は爆発することなしにカービィの腹の中に吸い込まれていった。




「狽チて!ええっ!?」
「みんな!シールド張って、しゃがんでて!!」




カービィの身体の周りに、薄く光が広がっていく。
マリオたちがシールドを張ったことを確認すると叫んだ。




「クラッシュ!!!!」




突如、カービィを中心に巨大な爆発が起こる。
ボム兵なんて比ではない。
爆発に続く、強い爆風がスタジアム上に積もっていた黒い綿をスタジアム外へと押し出していった。

マリオたちも、シールドを張ってはいるがその爆風に押されそうになる。
ちなみに、マリオはピーチ達を爆発から守る位置にいる。




「きゃあぁあぁぁ!!!」
「くっ…!自、爆!?」
「うおっ…!カービィ!?大丈夫かー!!?」




爆発が収まってピーチ達の無事を確認したマリオはスタジアム中央に走る。
スタジアム上にいた沢山の兵士達はきれいさっぱり消えていたが、
この爆発じゃカービィも無事ではすまないだろう。




「カービィっ!?」
「は〜い?」




カービィは爆発の中心地でケロリンパとしていた。
身体を覆っていた薄い光は消えている。




「なっ、お前、今自爆っ…!?」
「するわけないじゃん。自分の攻撃でやられてたらバカみたいじゃん」




カービィは笑顔で、ピーチ達のところに向かう。
ピーチは立ち上がってスカートに付いたほこりを叩き落としているが、
シークはシールドに体力を使いすぎたらしく、少しふらふらしている。




「…よく無事だったわね。…さっきの爆発は何?」
「ぼくのコピー能力の一つだよ。『クラッシュ』って言ってね、
 おっきな爆発を一回だけできるんだ。大丈夫?シーク」
「…くっ、……なんとか」




ふらふらしながらも立ち上がったシークは、変身を解いてゼルダに戻る。
と、マリオは上空からプロペラらしき音を聞きつけた。




「……?」




先ほどの巨大戦艦から、何か飛んでくる。
よく見るとそれは、何かの機械に乗った魔導師のような姿をした奴だった。
機械の下には丸いモノがぶら下がっている。




「なんだ、あれ…?…こっちに来る?」




ガァアンッ



「危ないっ!」
「狽ォゃあ!!」
「何ですの!?」
「なになに!?」




それはマリオたちから少し離れた所に落とされた。
マリオの身長ほどもある大きな丸いモノで、マリオ達に見える側には赤で大きくXが描かれている。
と、何処からか二対のロボットが姿を現す。




「!?」




四人は攻撃を予想して身構えるが、意に反してロボットは丸いモノに近寄っていく。
丸いモノの両脇を引っ張ると、中には何らかのエネルギー体と思われる球と、デジタル盤があった。
デジタル盤はリズム良く数字を刻む。その様はあたかも




(時限爆弾っ!!?)




そう思うが早いか、マリオは爆弾に向かって走り出していた。
他の三人も続こうと踏み込んだのと同時に、後ろから―――爆弾の反対側から、爆発音が響く。
三人は後ろを振り返り、走っていたマリオも、丸いモノの前で急ブレーキをかけた。




「っ姫!?」
「マリオッ!危な…っ!!」
「っ!?」




ピーチの言葉が終わる前に、マリオの目の前は一面鈍色に覆われていた。
それが砲弾の玉だと気づいたときには、すでに遅かった。




「うわぁああぁあぁっ!!?」
「マリオッ!!」




ピーチの声が虚しく響いた。
カービィは、空高く吹っ飛ばされたマリオを唖然と見送る。




「きゃあ!何するのよ!!」
「放しなさいっ!!」
「っ!?」




カービィが振り返ると、ピーチとゼルダが大きな鳥かごに入って、籠ごと浮いていた。
否、煙の中から現れた巨大なパックンフラワーに籠ごと捕まっていた。
笑っているのか、何やら耳に悪い大きな音を発している。



「はぁ、またなんか出た。…おいしくなさそう」




それでも、カービィは真剣な表情でその花に対峙した。








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