オレなら大丈夫だから






お前だけでも






先に逃げろ







 夜蝶
    08










ガサササササァッ




奇妙な鳥のさえずりしか聞こえない森の中で、もの凄いスピードで何かが移動している。

驚いた動物たちが、一気に空や地上へと逃げていった。




「まぁてええぇぇえぇえぇ!!!」

「はえぇよぉ!自分がマテ!!」




沢山の葉を散らしながら、もの凄いスピードで崖上に飛び出してきたのは一匹のゴリラだった。

そのゴリラは崖下にある、森だらけのこの場所には不似合いなものを睨みつける。




「オレのバナナァァアァァ!返せぇぇええぇ!!」




その怒気を含んだ咆哮は、森全体に響く。

崖下で、バナナを山積みにした車のような、カートのようなものにも先程の咆哮は届いていたのだろう。

そのゴリラに向かって、車の後部座席と思われる場所からミサイルが放たれる。三発だ。




ガササッ




ゴリラよりも随分小さな猿が、ゴリラの背中を蹴って宙返りで現れた。

そのまま空中で銃、の様な物をミサイルに向かって放つ。

撃墜したミサイルは、ゴリラの手前で崖下に落ちていった。

と、煙の中から撃墜し損ねたミサイル一発が再びゴリラに向かって飛んでくる。

猿は着地する前にもう一発ずつそのミサイルに放つと、それは弧を描く様にしてゴリラの後ろに落ちる。

猿が着地すると同時にそれは爆発した。








「ドンキー!おいらを置いて行くなんて酷いのサ!!」

「オレのバナナが盗られた!!いくぞディディー!!」

「…。まぁ、でも…」




「「許さねぇ」」





ドンキー、ディディーは崖下の車に向かって指を突きつけた。
















比較的平らな道を蛇行して進む車とは違い、ドンキー達は勝手知ったる自分の森を直線的に進む。

バナナを落とさないようにとバランスをとりながら走っている車に追いつくのに、さほど苦労はない。

だが、普段はジャングルで見ないような生き物が森の中に溢れていた。




「ドンキー!今日のジャングル、何かおかしいのサ!!」

「何が?」




ディディーは木々を伝い、前に進みながら、先程の銃をあちこちに放つ。

到底ジャングルにはいないであろう生き物が、その弾の前に気絶していった。

その随分前を、ディディーと同様に木々を伝いながらドンキーがジャングルを移動していた。

襲ってくる敵を、手当たり次第にぶっ飛ばしている。




「何がって、あからさまに変な奴がウジャウジャいるじゃん!」

「なんにしても、バナナが先だ!!」

(馬鹿だ…)




ディディーが呆れていると、突然ジャングルが終わり、抜けた。

目の前にちょうど、先程の車が走ってきた。




「ゲゲゲッ!!ドンキーたちが来やがった!!」

「に、逃げろっ!!」

「逃がすかっ!バァナナァアアァア!!」




運転席に飛びついたドンキーは、そこにいたハンマーブロスを真上に殴り飛ばした。

同じく車の後ろに飛びついて、クリボーに一発殴っていたディディーは、ドンキーのその行動に焦りの色を見せる。




「馬鹿っ!ドンキー!!それじゃこの機械が…っ!!」




みなまで言わずに、運転手を失った車は一直線に近くの木にぶつかった。

バナナは散乱し、車は煙を吹いて止まる。

ぶつかる直前に木の上へと、飛んで逃げたディディーは予想した事態に呆れている。




「あぁ〜ぁ;ドンキー!大丈夫ー!?」

「…大丈夫だ」




ドンキーの声はディディーよりも上のほうから聞こえてきた。

見上げると、木の上に変な格好で乗っかっていた。おそらく、ぶつかった衝撃で木の上に飛ばされたのだろう。

それでもドンキーは、何もなかったかのように木から軽快に飛び降りると、真っ直ぐバナナのところに向かった。

それにディディーも続く。




「バナナァァア!!!」

「いや、分かったのサ」




バナナにどれだけ執念を燃やしているのだろうか。

と、バナナを前にした二匹の後ろで重そうな足音がした。

二匹が振り返ると、ハンマーブロスよりも巨大な亀が不敵な笑みを浮かべて立っている。クッパだ。

クッパがが、さらに重そうな巨大な機械を取り出す。

その様子は、喧嘩っ早いディディーの気に障ったようだ。

威嚇するように、肩を回しながらクッパの方へと歩みを進める。




「何なのサ!?この森が誰のものかわかってるのサ!?」

「ッ、ディディー!!」




頭はディディーに劣るドンキーだが、勘の良さはディディーの遥か上を行く。

巨大な機械が唸りを上げると同時に、自身の太い腕をぐるぐる回して拳をディディーにぶつけた。




「ドンッ…!?」




いきなり殴り飛ばされ、文句を言おうとしたディディーが空中で見たのは、

先程の機械から放たれた黒い矢印がドンキーの身体を貫こうとしている所だった。




「…ッ!!」




思わず目を覆う。

真っ暗なまま、ディディーは森の端まで飛ばされていった。











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