飛べない天使なんて、笑えるよね
でも、自分の意思で堕ちたんだから
夜蝶
09
その頃、マリオとピットはなんとか地上に降りたばかりだった。
足を踏みしめて、久しぶりの地面の感覚を満喫する。
と、スタジアムでも聞いた、プロペラのような音が聞こえた。
見上げると、あの緑のローブがはためく。
その下の部分には、スタジアムを飲み込んだ爆弾がぶら下がっている。
「おい、あれさっきの奴じゃ…!?」
「本当だ…っ!追いましょう!!」
二人は、緑のローブを目指して走り出す。
マリオやピットの脚力にかかれば、追いつくのにさほど時間は掛からない。
後ろから猛スピードで追いかけてくる二人に、謎の人物は気がついた。
「アレは、スマブラめんばーの…」
「てめぇ、待て!!」
「その爆弾っ、また何処かを飲み込むつもりだなっ!!」
「シツコイですね。それにワタシハてめぇジャナクテ…、エインシャント卿と呼んでクダサイ」
「そんなことは、どうでもいいっ!!」
自慢のジャンプ力を駆使して、マリオがエインシャント卿へと手を伸ばす。
だが、あと少しという所でエインシャント卿は高度を上げ、マリオの手は届かなかった。
くそ…っ、あと少しなのにっ!!
と、突然背中を押される感じがして、そのまま地面へと落ちる。
落ちる前に見たのは、ピットの背中だった。
マリオを踏み台に、エインシャント卿を追うピット。
だが、さらに高度上げられ、爆弾に指先を掠るだけだった。
「っダメだ…!」
「ぐおっ!」
マリオはろくな受身も取れずに、地面に叩きつけられる。
その前に華麗に着地するピットは、悔しそうにエインシャント卿の行く末を見つめる。
エインシャント卿はさらに高度を上げて、そのままどこかに消えていった。
「くそっ…逃げられた…!!」
「ていうか…」
マリオは顔を伏せたまま唸った後、勢い良く顔を上げる。
「お前、何オレの事踏んで行ってるんだよ!!天使なんだから、飛んで行けよ!自力で!!」
「何言ってるんですか。地上と天界では気圧の量が違います。地上では重すぎて、天界の様に自由には飛べません」
「そんな子供の夢を壊すようなことを言ってんじゃねぇよ!」
もはや、今までの天使像がメチャクチャだ。
マリオは体中に付いた砂埃を払いながら立つ。
立ち上がるのに手を貸しながら、ピットが何か呟く。
「それに…」
地上に堕ちた天使が、大空を飛べるわけがない
「それに、何だ?」
「…いや、なんでもないです」
笑いながら言うピットにわずかばかりの不安を感じながらも、まぁいいかと納得してしまったマリオだった。
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