あの時
ボクは君を止められなかったし、一緒にも行けなかった
今度こそ
夜蝶
11
「大丈夫?…もう大丈夫だから、安心していいよ」
「あ…」
野球帽の少年の差し出された片手を見つめる、倒れている少年。
慌てて挟まっていた右足を抜く。
未だに伸ばされている手を握ろうと、手を伸ばした。
<―なんで、ポーキーがここに…?それにあの姿、本当にポーキー、なの?>
「え…っ?あいつの、知り合い…?」
「ッ!?」
思わず伸ばしかけた手を引っ込めてしまった。
目の前の少年を凝視する。
相手も驚いた様子で見ていた。
「なんで、君、今僕の考えていたことを…?」
「あっ…!」
片手で口を覆う。やってしまった。
聞こえてきた心の声に反応してしまうのは、自分の悪い癖だ。
どう説明しようかと悩んでいると、野球帽の少年は一度だけ目を閉じて、再び倒れている少年を凝視した。
それはほんの少しの間だけで、すぐにまた手を差し伸ばす。
「…あの」
「早く、立って。相手は待ってくれないよ」
「…っ!」
慌てて手を取り、立ち上がる。
その隙を狙ってきたポーキーの突進から、二人で一緒になって避けた。
「リュカ。君は、ここから早く逃げるんだ」
「でも…っ」
「危ないよ。だから、早く」
そう言ってポーキーに突っ込んでいった彼の背中が、再びあの日の片割れの背中とダブって見えた。
まさか、聞かれるとは思っても見なかった
どういう仕組みなのか、突然宙に浮いて電撃を放ってくるポーキーの攻撃を緊急回避で避けながら思う。
自分やポーラ、プー以外にもPSIの使い手がいるとは想像もしなかったことだ。
(でも、前にミュウツーもテレパシー使えたし、居て当然かも)
電撃攻撃が飽きたのか、再び地上に降りてそのうるさい足で攻撃してくるポーキーの後ろに回って、
何度目かのPKファイアーを繰り出す。
その炎を巻き込んで、そのまま横に突進してくるポーキーを横に飛んで避けた。
ポーキーの正面に出たことで、中のその姿を確認することが出来る。
身長は自分と変わらない。だが、その姿は老人のそれであり、自分が最後に見た姿とはかけ離れていた。
なんで…っ、こんな
一瞬目を伏せたことで、再び突進を掛けてきたポーキーの攻撃に反応が遅れた。
目の前に何本もの鋭く尖った機械の足が迫っていた。
「…っ!!?」
「ヒモヘビッ!!」
急にTシャツの端を何かに掴まれて、横倒しになる。
だがそれで、ポーキーの進行方向からは逸れて、すぐ横を走り抜けて行った。
何が起きたのかと見上げれば、リュカが手に赤いヘビを握っている。
その口は自分の服に噛み付いていた。
「ぼ、ボクも…」
もう片方の手は、強く握り締められている。
「ボクも、戦います」
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