異世界との交流が





再びはじまる






 夜蝶
    16






太陽が天に昇ろうとがんばっている頃


深い森には深緑の光と、鳥の声だけが降り注いでいた。




ザッ



「ふぅ…」




森の中を歩く青年が立ち止まって片手で汗を拭う。

辺りを見回しながら思う。今どの辺だろう。

と、森の鮮やかな緑に混ざって、別の緑の生き物が目に入った。




「……」




青年はこれといった反応は示さずにその横を歩いていく。早足で。

気のせいだ、こんな所に彼がいるはずがない。疲れてるんだきっと。向こうも寝てたし。

何もなかった事にしてその場を立ち去る。

だが同時に、懐かしくも思った。あれからどれくらい経っただろう?

みんなどうしてるだろうか。




「…あった」




深い緑の世界に、ポツンと立っている小さな台座。

その上に突き刺さっている一振りの剣に木漏れ日がかかっていて、一種神聖な場所と錯覚させられる。

実際そうなのだが。

青年は台座に近づき、その剣の柄に手をかける。

そのまま、力を入れて上に引っ張った。




「よっ、と」




さほど力をいれずとも、自分の意思に沿うようにして剣は抜けた。

それを木々の間から見える太陽の光にかざす。

その剣が光を反射するその様子は、退魔の名にふさわしい。

しばらくその剣を懐かしそうに眺めていた彼だったが、その剣を鞘に収めた。

そうして来た道を引き返す。

と、空から何か大きな音が響いてきた。

見上げると、巨大な船が宙に浮いていた。

そんな技術は、この世界にはまだない。この世界には。




「まさか…」




先程素通りした場所まで走って戻る。

そこにはまだ、この世界の生き物でないモノがすやすやと眠っていた。

どうやら夢でも、疲れていた訳でもなかったようだ。

と、自分と同じように不穏な気配に気付いたのか、それはもぞもぞと動いて起き出す。




「んっ…あれ、ここは…。あれ?リンク、さん…?」

「…おはようございます。お久しぶりですね、ヨッシーさん」




その小柄な恐竜は、まだ眠そうに、緩慢な動作で辺りを見回す。




「…あれぇ?わたし確か、島の森で昼寝してたはずなんですけど…」

「どうやら、7年前と同じようなことが起こってるようですね。あんな物、私の世界にはありませんし」




リンクが見上げる空を、ヨッシーも見上げる。

そこには、レインボークルーズとも、かつての仲間の船・グレートフォックスとも違う、大きな船が空を飛んでいた。

その船底が開き、中から黒い雪のような物が降ってきた。




「雪…ですかねぇ?」

「…あんまりいいものじゃないみたいですね」




積もった黒い雪の中から、何かの生き物らしきものが生まれる。

それは、こちらに向けて殺気を放っていた。

その様子を見て、ヨッシーは目を擦りながら地上に立ち、リンクは手に入れたばかりの剣を構える。




「せっかく、食べ物たくさんな夢見てたのに…」

「この平和な森をよくも…。ヨッシーさん、追いましょう!!」




二人は森の奥へと足を踏み入れる。

敵はさほど強いわけではない。

だからか、数で攻めてくる敵だったが、二人は難なく蹴散らしていく。




「キリがないですね!!」

「うぅ〜ん?…どっかで食べたことのある味、な気が…?」




首を捻るヨッシーをよそに、リンクは何処からか爆弾を取り出す。

それを前方の敵の群れに向かって、投げつけた。

もちろん敵は、それによって吹っ飛ばされる。




「さぁ、急ぎましょう!!」

「…過激ですねぇ」




残った敵を蹴り飛ばし、倒れこむ前に舌で絡め取って腹に収めながらヨッシーが呟く。

そうやって二人は、少しひらけた所に出た。

久しぶりにまともに拝めた空には、先程の船が船底を閉じて空高くへと昇っていくのが見えた。




「もうあんな所に…。わたしのジャンプでも届きませんよぉ」

「まだ諦めちゃいけませんよ!他にもまだ、何かするつもりかもしれませんし!!」

「あ、ちょ…リンクさぁん!?」




疲れを知らないかのように、再び走り出したリンクの背中を追って、ヨッシーも森へと再び踏み込んでいった。









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