わたしの大切な物
返しなさいよっ
夜蝶
18
無機質な空間がずっと先まで続いている。動くものも、生きているものも見当たらない。
そこに突然、一つの音がけたたましく響いた。
ガンッ
最後に一つだけ大きな音を響かせて、天井の一部が外れた。
そこから黄色の長いものが垂れてくる。どうやら髪の毛のようだ。
天井から逆さまの状態で出てきた頭は、きょろきょろと辺りを見回すとすぐに引っ込む。
数分と経たないうちに、同じ穴からブロンドの長髪の女性が姿を現した。
華麗に床に着地して、立ち上がると同時に銃を構えて辺りに警戒する。
誰もいないことを確認すると、銃を構えたまま通路を走っていった。
(わたしのパワードスーツ、わたしのパワードスーツ、わたしのパワードスーツ!!)
その端正な顔に怒りをあらわにしたまま、片っ端から近くにあるドアを開けていく。
だがいくつ部屋を覗いても、目当てのものは見つからない。
焦燥感から、襲ってきた警備ロボットを掴みあげる。
「ちょっと!?わたしのパワードスーツ、どこやったのよ!?」
「知リマセン知リマセン知リマセン…!!」
哀れなそのロボットは端正美麗な女性の怒りによって、後ろに続いていたたくさんのロボットの群れに投げつけられた。
当の本人は、投げつけた事による爆発に乗じて再び姿をくらます。
(ふざけんじゃないわよ!わたしの商売道具を!!)
怒りのままに開けた部屋に飛び込む。それでももちろん、警戒は怠らない。
そこは、それまでの部屋とは違った。
突然の光で目が眩む。
「チャァ〜!!!」
「っ!?」
久しぶりに聞いた、懐かしい声、というか鳴き声。
巨大な装置の中に、一匹の黄色い生き物がいる。
それが、ピカチュウと呼ばれるねずみポケモンということを知っていた。
ピカチュウの電気エネルギーを搾り取るかのようにして、その機械は動き続けていた。
一時の沈黙を放っていた機械が、再び光を放ち始めた。
「ピ、ッカァアァー!!」
「ピカチュウ!!」
手にしていた銃を、鞭型に切り替えてその機械に向けてはなった。
機械は小爆発を起こしてその動きを止める。
中から、先程のピカチュウが姿を現した。
「ピカチュウ!大丈夫!?ていうかなんでここに…」
「助けてくれてありが…。て、サムス!?」
両者驚きを隠せない。その背後で、けたたましい音が響いた。警報だ。
先ほどまでの比ではない数のロボットがその部屋に現れる。
暗い中不気味に光る目が、怖い。
「…どうやら、ゆっくり話してる暇なさそうだね」
「そうみたいね。わたし、パワードスーツを盗られちゃったのよ。手伝ってくれないかしら?」
「もちろん!助けてもらったんだし。ていうか、サムスそのままでも十分強…」
「行くわよ!!」
ピカチュウの言葉を最後まで聞かないうちに、サムスは走り出す。
敵に容赦のないサムスを見て、何を言っても無駄だとピカチュウは悟った。
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